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予告編:十五夜夏月様2012
気持ちが悪い。
人懐っこさを信条に生きていたおれのはずなのに、あのこに話しかける時はいつでも喋る言い訳を探してしまう。
何が仕方ないというのか、おれ自身も知ったこっちゃない。が、それでもおれはいつだって、あのこと話す理由を探しては、あのこを探し回る。
偶然という言い訳さえあれば、たとえ振られていても会う理由になるのだろうか。
つくづく、馬鹿みたいだと思う。というか馬鹿そのものだ。
少し遠くの前方で歩くあのこを確認しては、少し早歩きで一度曲がり、合流地点で巡り逢うように計算をしながらペース配分をする。そして偶然を装って巡り逢うんだ。
だけどある時、トラックの陰を歩いていたはずの彼女が消失した。
バレたんだ、きっと。実際、尾けていたようなものだもんな。まかれたんだろうよ。
恋は人を幸せにすると歌は歌う。だけど、恋が故に苛む胸の痛みだってあることも歌は歌う。答えはいつだってひとつじゃない。
きっとそれはいくつになっても変わらない痛みで、むしろきっと年を重ねれば重ねるほどにコジラセテハイケナイイタミ。
それでも、この恋が成就するというのなら、それはとんでもなく不幸なことなんだと思う。こんな気持ちが悪い主人公がいたとして、絶対にその恋は報われてほしくない。
空虚なカスい馬鹿。おれはどこまでも気持ちが悪いようだ。



十五夜夏月様2012



夕空暑い中、おれはひとり家路を歩いていく。
おれの名前は懐と書いてナツキ。
どこか壊滅的な雰囲気がするいい当て字だと思わないか。
平成も24年の現在、世間には結構な数のナツキが溢れていると思う。少し前のベストセラー、まさかのナツキキャラが二人出てきたときは作者の正気を疑ったものだ。
その点、おれの両親は中々わかっている人だったと思う。
少なくとも漢字かぶりの人間と出会ったことは無いし、フィクションでも今のところ知らない。それはきっと、幸せなことなんだろうよ。
名は体を表すと言うが、名前は名前だ。おれを指す記号だ。他のナツキとは違うけど同じ、同じだけど違うナツキ。人と被ることの無いオレの名を、おれは好きに思っていた。
それでもそれは、自意識過剰な人間のささいな自己満足にすぎず、そういうささいさに満足を見出せる人間はみんなきっと、その比じゃない自己嫌悪を孕んで生きているものだ。
少なくともおれはおれという自分を見下げ果てていた。
外見にコンプレックスがあるとすれば、きっとそれはポジティブが反転したネガティブなんだろう。悪くはないはず、むしろ平均よりかなり上。なのに。外見が人生の裏付けであるかのように、過去は因縁めいて陰陽因果を応報するようだ。
恵まれた容姿は時に、人の心を遠ざける。それだけで人はおれに安易な人生を想像してくるし、警戒もされる。そして酷い勘違いも。
少し話せばそんな人間じゃないとわかるように振る舞っているつもりなのだが、どうにも軽い人間だと思われて、低く安く見積もられる。―――他でもない、人間性を。そんなに辛いことはないよ。
おれに心当たりがあるとすれば、それはおれが周囲の人間の顔ばかりを覗って生きていたということ。道化を演じることに躊躇いを覚えないおれは、簡単に自身を偽り、文脈に応じたキャラを作って見せる。
時には最低な発言をすることだって厭わないぜ。おれはいつだって、自分をないがしろに生きてきたのさ。だけど、そんなの冗談だってわかるだろう?
なのに世の中にはそんな茶番すら演技と見抜けない人間が多くて、そして噂は広まり、勝手な想像でおれは判断される。
ざんねんないけめん。
まったく失礼な話だ。イケメンだなんて安売りされた言葉は決して褒め言葉ではないということを、世間はもう少しわかってほしい。


おれはこれまでの人生で、ろくに喋ったこともない人間から蛇蝎の如く忌み嫌われたことが何回もある。
女友達ができる度に、そのこに思いを抱く人間や、彼女を大切に想う人間からの殺意を受けるんだ。
何回、見知らぬ人の殺すリストトップランカーとして扱われたかわからない。
男女というだけで、仲良くなる前に立ちふさがる壁。同性だったら親友になれたのかな。そんな言葉がどこまでも空しく響く。
それでもおれはあのこがすきだ。その気持ちに嘘も偽りもないと思う。
振られてから月日は12をふたまわりもしたのに、おれは未だにあのこをきらいになれないでいる。どれだけ近くても、平行線の距離感は決して埋まることがない。線はあくまで二本でイコール。それが答え、なんだろう。
だからおれは、あのことの距離を固める道を模索していた。
新しい女友達ができて、その子と良い雰囲気になったことも一度や二度ではない。それはきっととても幸運なことで、おれはもっとその今を大事にしなくちゃいけないはずなのに。
だけど、それでも、いつだって今だってこの後ろめたさはなんだ。
理性が限界だ。ふざけんな、くそったれ、ちくしようめ。
人懐っこい人になりなさい。
両親はそんな願いを込めて、おれに懐という名前を付けた。
相手の気持ちがわかる人間になりなさい。
人に甘えることのできる人間になりなさい。
人の心の隙間を埋めてあげなさい。
それは、おれの名前に刻みつけられた「基準」だったんだと思う。
だけど実際におれというおれに突き刺さった軸は、人の顔色を見ること、だったんだ。
おれは自分の想いに対するスタンスすら、周囲の顔色を窺って決められずにいた。
わかっているよ。おれだって今のままじゃいけないことは。
だけど、今のまま向かう先もわからないのに、違う道なんて探す余裕もなくて。
いつしか胸の内には、ただひたすらに誤魔化しの感謝が渦巻いていた。
こんな気持ちが悪いおれなんかに、どうしてこうも優しい人がいるのか。
あの子もそうだ。あいつもそうだ。おれのかぞくともだちはみんなそうだ。
そんなに幸せなはずのおれが、どうしてこんなにも辛くて泣きそうなんだ!
死ぬ様なドツキ方。だれかおれに体で教えてくれ!
だれかおれの目を醒ましてくれよ!ちくしょう、なんなんだよ。…おれはおれをどうしたいんだよ。
この恋は決して報われない。
あのこをもっと知りたい触れたい感じたいという気持ちは単純に、気持ちが悪い妄想だ。たとえそれが恋であったとしても、その気持ちに従って動くことはもはやストーカーと言われる犯罪なんだ。そんなことはわかっているよ。
いつかおれはあのこに襲いかかる。それは近い将来に現実として起こりうる世界だ。
理性が、理性が、理性がもう限界なんだ。
彼女もきっとそれに気付いている。おれの暴走し始めた制御不能の狂気に気付いている。すきだすきだすきだすきだ。それのどこが悪い。全部だ!!
おれはこのおもいにけりをつけなきゃ前に進めない。
きっと誰かを好きになれば忘れる思いもある。だけど、いつだって思いは思い出されるんだよ。だから重いんだよ。もう、ほんと、わけがわかんねぇよ。


全ては手遅れだったし、おれは既に誰からも愛されないであろう、軽蔑されるにふさわしい人間になり下がっていた。
世界はきっと、おれが一線を越えるだけで簡単に壊れるところまで来た。
夕焼けが照らす家路もいつしか闇に染まり月が昇る。
おれは、自分の心が限界だと今日もまた気がついた。
月は鏡のように反射をして、なのに真実はなにも写さない。なのに馬鹿が団子を食いながら兎や珍獣の類を見る。
なんだそれは、薬物で幻覚を見る隠喩か。いいね、望むところじゃねーの。破綻の時は、目の前まで来ている。すでに一線は越えている。
満月は知っていた。満月だけは見ていたから。
月下咆哮。おれは悲鳴を上げる心を強制的にかき消す叫びをあげた。愛してるぜ。決しておれはきみを幸せにはできないけれど。この胸の痛みもきっと、おれには相応しい罰だ。
きっと明日、彼女には卑しいストーカーめと、軽蔑の眼差しを向けられることだろう。じゃあおれはその空気を読まないことにする。おれはそうして、他の誰でもないおれになるんだ。
世間には愛が溢れていて、そんな簡単なことができない人間をひとは社会不適合者と呼んで蔑む。
だけどな、そんなお前らに価値を与えてやっているのは他でもないおれのような人間なんだよ。
さよならの方法はとても簡単で、だからこそ手を出し辛い。
いつだって天に座すお月さまは、身近で、だけど遠い存在。
そんな風にして、馬鹿みたいに浸っていたおれは、なんにもわかっちゃいなかった。
決意なんてものに未来志向は無い。だから簡単に揺らぐ。
それでも今宵は十五夜だ。
気持ち悪いおれの姿を全部見下げ果てていてくれた、それでもおれを受け入れてくれる満月様に感謝をしよう。また逢えたらその時は、少し明るい笑顔できみを見あげたい。
十五夜夏月様。おれはきっと、何もしないまま、その時を迎える。
それでもおれはあのこと、月が綺麗ですねって、言いたいんだ。
願いが本当に叶わないことを理解しているから、せめてもと人は空に願うんだ。
愛を。


小説:十五夜夏月様 
2013年9月19日更新


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2012/09/30(Sun) | 小説・十五夜夏月様 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
王者夜戦・結果感想
せっかくの休日なんでPPVの速報に対して結果感想でもやってみる。
まぁネタバレしてるので格納してますよ。
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2012/09/17(Mon) | WWEをげほげほと | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
リテイク
投稿用に書きあげた小説をリテイクしたりしていました。

結構心身共にリアル死にそうな状態の時に無理やり書き上げただけあって、
誤字脱字が冗談じゃなかったり、致命的に終わっている矛盾以前の描写があったり
色々とひどい感じだったりしましたが、方向性は案外整っていて
そこまで卑下するようなものではなかったと思います。

ちょっと構成に趣味の無駄が多かったりくどかったりで
評価には値しないものなのかもしれないけど
ストックとして、あの話が書けていることは前に進む価値がある
そういう風に、思うことにしました。

読めるものにまでは磨きあがったと思います。


そういうふうに小説書いたり本読んだりしながら
日々を取り戻していきたいなぁとリハビリ中なわけですね。

でもホント、この数年はひどいことがありすぎて、フラッシュバックが酷いです。
頭痛がなー、クセになっちまったよなー。
2012/09/16(Sun) | 日記 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
季節感とはなんぞや
おひさでーす。
ネガティブエンジンがフルスロットルで回転したり
ちょっとこまめに更新できたりは無理そうなのですが
何もしていないわけではありませんぜという顔出しです。

というわけで今月末に、少し何かできたらと今は調整しているわけであります。
それはきっと今後の方向性のヒントぐらいにはなるんじゃないかと思います。
感想とか書ける精神状態ではないですが
それなりにできることはあるよなー、ということで。

大事なのは金にならない、金にしないということ

それだけ踏まえれば、できることはあったんですよね。
いやあ、気づくのに時間がかかっちまったぜ。

まぁ、ちょっと今のベクトルを生かすナニカを模索中ということで。
今しばらくはどうか、プリーズウェイト、なう。
2012/09/15(Sat) | 日記 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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