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七夕牡丹餅2013 ~ハローグッバイ~
もしも願いがひとつだけ叶うならば、愚かな私は願いの叶わない世界を願う。
私の願いはいつだって波乱万丈、ドラマに満ちたストーリーのヒロインであること。そんな世界に見合うだけの才覚を、美貌を、そして精神を磨くことが私の人生だったから。

だけど、そんな世界が来てはいけない。
だってそれは、誰かの不幸の上に立つ世界だ。
私という個性が英雄になる環境は、それだけで暗い世界である。
思うに希望とは、絶望を言語化しなければ成り立たない言葉から、意志だから。
私は私の願いが叶わない世界を心から願う。

だって私は、世界を滅ぼせるほどの希望になれる存在だから。
だから人は、絶望を織り紡いだような私を捕まえてこう呼ぶんだ。

魔王と。



七夕牡丹餅2013 ~ハローグッバイ~


追いかけているのか、引きずり込まれているのか。
目の前に駆ける親子を殺しに行こう。その子供の未来を断つために私はツケ狙う。
殺さなきゃいけない。どいつもこいつも生まれてはいけない子供だらけ。喜びも、悲しみも、何もかもがくっそくらえ。表裏一体の裏を押しつけられたものはたまらない。
河岸の川。決して魔が渡れない一線を越える前に。殺す。だってほら、ぶっちゃけ殺意一つさえあれば、くっだらない物語なんて簡単に成立するんだから。
ほら、きみも夜の街に出て、ナイフを握りしめてみろよ。それだけでアドレナリンは無駄にほとばしるから。殺すぅ?
「おとうさんおとうさん!まおうがついてきているよ」
「いいや、こどもよ。それはただのへんしつしゃだよ」
「おとうさんおとうさん!まおうがまほうをつかうよ」
「いいや、こどもよ。それはただのナイフの煌きだよ」
「おとうさんおとうさん!」
「もしもしわたし。いま、あなたのまえにいるの」
出会いがさようなら。それゆえに私は魔王。あらゆる未来を経ち続ける。
なぜなら私は未来がわかるから。
それは予知ではないし預言でもない。むしろ推理に近い把握。現在を掌握することで世界を支配する、それが私を魔王たらしめる由縁だ。
ひとつ簡単な未来を教えてやろう。七夕の夜、日本では雨が降る。
そうさ、世界なんて所詮はそんな安っぽいティーターン、茶番なんだ。
あなたは他の日、私は今宵に殺しに行くよ。血の川を越えて。
もちろん父親が家に辿り着く頃、その子供は死んでいた。
なぜなら私こそが、魔王ガールだから。





子供が殺された。赤の他人の子供が、殺されてしまった。
目の前で、おれの女だった女がおれを罵り倒す。
人を人殺しみたいに言ってくれるが、義理のない相手を見殺しにしただけだ。
「…おれの子供じゃねーし、だからって殺そうと思って死なせたわけでもないよ。だっておれが殺そうと思っているのは、いつだってお前ひとりなんだからな!このクソビッチ!!」
馬鹿なら虎も獅子。だが俺は人間だ、嘘偽りで俺の子だと托卵されて笑顔なんかキープできない。ましてやご奉仕など!!まだ他人から始まったほうが愛情だって注げるもんだ。
ぶっちゃけ殺意一つさえあれば、くっだらない物語なんて簡単に成立する。安い理由と、容易い自由。人が別れるために出会うとは、どこかの誰かもよくぞ言ってくれたものだ。
おれも、こいつと別れるために出会ったんだうな。
おれが血に染めた女、自分の血に染まる女、恨み辛み妬み嫉む女。我ながらくだらない男を自負しているおれだが、それに人生を台無しにされたコイツも相当だ。
そりゃあ、この女の知人友人家族の数だけ擁護はできるだろう。だがそいつも所詮は恥の上塗りに過ぎない。
思い出せよ人間。おれらはいつだって、殺すことで生きる殺し屋だろうが
この女もそうさ。最初はオレのことを褒めそやしたもんだぜ。おれは魔王なのにな。
なんて素敵な人なの。いいえ、それは魔王です。
なんて優しい人なの。いいえ、それは魔王です。
運命の人?確かにそうかもな。魔王的な意味で。
その時、風が吹いた。おれは死んだ。知らない女が立っていた。
「そうか、あんたがおれの魔王か」
しんだ俺の亡骸を、抱きしめてくれる父さんすら、おれにはいなかった。


※※


不思議なお姉さんと出会った。
世界には簡単な死が満ち溢れていることを知ってしまった、あの旅行の後で、学校に行く気にもなれず、日々を無駄にしていたおれに訪れたささやかな出会い。
全身に血を浴びながら、優しい笑顔でおれを守ってくれたお姉さん。
「にんげんのにくは小さくてまずいんだ。だからひとは大きな牛や鯨を食べるんだよ。でも最近じゃ、人と家畜の区別もつかなくて、自由と理由の区別もつかなくなった。理由なき自由、それが街には多すぎる」
「おねえさんの言うことは、いつもいみわかんないね」
「ふふ。意味不明なことを笑顔で言って、少年をたぶらかすのが、お姉さんの仕事だからね。うふふふふ」
一年前のおれなら、このおねえさんをイカれていると避けたことだろう。
だけど違うんだ。まともだから狂うんだ。イカれてるってことは、目をそらすって事と同じ。考えれば分かることを試さない人たちと、試さずにはいられなかった狂人と。
マトモッテ何サ。
マザファカとかもういい。ジーザスとかシットとかぐらい知ってる。
もっと汚い言葉が欲しかった。現実を言葉にする、腐った聖書が読みたかった。
「きみには未来がないね。殺す価値なんか、全然ない。だから、それがいい」
家族旅行で行った某国で、家族が殺されるところを見た。家族が人を殺すところを見た。人は人を殺すもんだと知った。
これは、そういう前提の物語なんだ。


※※※


星の川を挟んで対峙する。
星は命で、命を紡げば、それは川だ。
女の名前は夏月(なつき)で、男の名前は懐(なつき)、少年の名前は夏生(なつき)。殺された子供の名前候補も菜月(なつき)があって、殺された女の旧姓は夏木(なつき)だった。
もちろん悪い冗談だ。
七夕牡丹餅、過去を食い散らかして未来を願え、前へ進め。
殺すのは誰だ殺されるのは誰だ、殺すのはなぜだ殺されるのは慣れた。
生きるのは何故か。
これはあなたに問いかける物語ではない。むしろ逆。
問い詰めるのは未来で、恋焦がれるのは間違い。
私、織姫は壊れてしまった世界を乗り越えて、今という未来に立って明日を目指す。
会えないかもしれない保険に頼るのはもう辞めだ。
会いに行く言い訳に従うのはもう辞めだ。人が生きるのは何故か。
その夜はいつだって未来で、その夜はいつだって過去。
私に言わせればあいつだってあいつだってあいつだって私の彦星だ。人ごみこそが、私の行く手を阻む天の川だ。
知ってしまった。それだけで始まる物語がある。
絶望と後悔と、ささやかな今を抱いていく先の未来で、私は本当の意味で私になる。
どれだけ環境がクソで、声だけしか届かない笑顔だったとしても、届け、笑え。
たとえ出会いが別れの始まりだとしても、きっと別れは次の出会いの約束だから。
約束を果たしに行くよ、会いに行くよ、終わらせやしないよ。何もしないで終わらせることもできるよ。簡単にできたよ、そればっかりやってきたよ。
それでも今日は、今日という日だけは、私が私を奮い立たせる記念日なんだ。今こそが、またがんばると決めた今なんだ。
見せてやるよ、本当の物語というやつを。
ものがたりものがたり、まおうがおいかけてくるよ。
いいえ、まおうの時間はもう終わりです。これからは、人間の時間。
殺意なんて簡単に転がっている。そこに目を向けるでも、逸らすでもない答えを出す時が来たということ。安い殺意の物語を殺す物語、即ち魔王の所業。
魔王ですね、それがどうした!私が織姫だ!!私は紡ぐぞ未来。止めるぞ、くだらない脳内葛藤を、欺瞞を、停滞を。
なんてことはない。ただ、笑顔ひとつで軽くなる世界を知っているから。




小説:十五夜夏月様 
2013年9月19日更新




それは言うまでも七夕牡丹餅延長戦。
決戦は十五夜、立会いは夏のお月さま。
戦いの相手は、報われない願いとお団子大戦争。
やぁ、次に出会うときが、本当の意味でのさようならだ。
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2013/07/07(Sun) | 小説・十五夜夏月様 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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