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第四十一話 カーニバルにもしもはない
(第一話~第三十話はコチラから)
(第三十一話「死心死体の女」はコチラ)
(第三十二話「殺すロックオン、任せて」はコチラ)
(第三十三話「大事な存在を再殺せんとする強い意志」はコチラ)
(第三十四話「武装錬金エンバーミング」はコチラ)
(第三十五話「死守とミッドナイトラン」はコチラ)
(第三十六話「沸き立つ死(前編)」はコチラ)
(第三十七話「湧き立つ死(後編)」はコチラ)
(第三十八話「a BOY」はコチラ)
(第三十九話「黒く死に熱く死に甘く死ね」はコチラ)
(第四十話「デイ・アフター・ファイナル」はコチラ)


それではオリジナル武装錬金小説、「武装錬金ビフォー.」第四十一話です。
続きを読むからどうぞ。







死はいつか誰にでも訪れるものであり、完全に逃れる術を持つ者はいない。
死とはつまり永遠であり、永遠の虚無であり、永遠の別れである。
だが、沈んだまま二度と昇らない陽もまた無いように。
雲隠れ、たとえ月の裏側に隠れたとしても、また顔を出すのが陽である。
いつか来る空を願い、奇跡は必然として祝福は幸いになる。
別れが常に永遠をさす言葉ではないということ。

この物語は希望が空の彼方に消え、不条理が地の底に堕ちた時に始まった。
希望は絶望によって絶たれ、絶望は希望へ形を変える。
俯くものに洗礼を。顔を上げた者に祝福を。
永遠なんてなくてもいい。ただ、幸せがあればそれでいい。
みんなが苦しんだり悲しんだりする代わりだと思えば、大丈夫。
多分耐えられると思う。
だから、もう少しだけ、このまま戦い祭り続けよう。



第四十一話 カーニバルにもしもはない



ブラボーは何名かの戦士達を指示し、“フラスコ”を真希士用に調整していた。
ここは、聖サンジェルマン病院、最深部。

ブラボーが、剛太たちに同行するのもひとつの案ではあった。
ブラボーのシルバースキンを裏返せば拘束具となる。目の前で狂い死のうとしている者がいたとき、それは命を救う道具にもなるだろう。ブラボーはまさに、剣持真希士を押さえつける上で、最適の人材と言えた。まさかブラボーほどの者が、目の前で狂い襲い掛かる戦士に動揺し、“とっさの反射行動”の選択を過(あやま)つなんて無様を犯す筈がない。もしもブラボーが暴走する剣持真希士を前にしたならば、きっと持ちうる全ての戦力を使って、即座にシルバースキンを裏返しで射出し真希士を拘束したに違いない。
救いの手段がはっきりしていたからこそ、肝心なことは真希士を止めるコト。ブラボーはその作戦において最も最適な人材と言えた。
しかし、ブラボーはあらかじめ同行を断った。また、以心伝心。剛太たちも頼むことをしなかった。
その理由のひとつは信頼。つまり、剣持真希士が人間型ホムンクルスであったということ。人間型ホムンクルスは精神を本体に殺されることが無い。つまり、言葉が心へ届くということである。つまり絶望にこそ希望は見出される。
言葉は信念は、貫き通されたときに届くということをブラボーは知っている。つまり、真希士を止めるべきは信念であり、拘束具であってはならないということ。命を運ぶものが届けるのはいつだって心であるべきなのだ。
敵は全て殺す、それを当たり前だと考えてしまった時、戦士は化物の世界へ堕ちることになる。誰もそれを悪とは言わない。ただ、ブラボーや剛太たちがカズキを知っていただけ。敵は全て殺すという手段を当たり前と考えずに、苦しみながら戦い続けたあの少年を知っているから、だから。彼が守ったこの世界を、彼の悲しむような苦しみで埋めてはいけない、それが守るべき信念。カズキの分も、カズキの戦い方で戦う。それが、真希士を救うという戦いの中で、剛太達がとった手段。儚くも優しく哀しくも空へ消えていった彼を思うキモチ。
そして、ブラボーがオバケ工場に向かわなかった理由がもうひとつ。
キャプテン・ブラボーには戦ることがまだあったから。残った。
ブラボーもまた、今まさに戦っていた。それはそう、命を守る戦い。

救いの鍵は鍵穴に合わなければ意味がない。
パピヨンが捨て置いたパピヨン謹製、新型フラスコ。この人工冬眠専用のフラスコは武藤カズキ、つまりヴィクターⅢにあわせてカスタマイズされた者であり、真希士の為の者ではない。当然、真希士の為の調整改造が必要であった。
そう。その指揮の役割を、ブラボーはかって出たのである。
真希士の元上官として、真希士の師として、友として、キャプテンとして。
安らかな眠りになるように心をこめて。身長から体重から知りうる在りうる全てのデータをブチ込んで、フラスコはホムンクルス・剣持真希士の為の棺桶となる。
「みんな、頑張ってくれ。夜明けに間に合うように。」
指示の合間合間に、励ましの言葉を挟む。その言葉は、協力してくれている名も残らぬ戦士達のもとへ。そして、彼らの存在こそが、ピリオドを彩る支えとなっている。
あなたは知らない。
名も残らぬ戦士達。彼らこそは、こうなる以前から、ホムンクルスの再人間化を研究していた戦士。未来と希望を繋ぐ、戦士たち。
戦いとは何も殺すことだけではない。そう、殺すことを当たり前に生きてきた組織がピリオドのあの日、第戦士長の決断一つで変わるものとも到底思えないのだ。組織が変わるためには、どこかに先見の明を事前から持っていた者が必要となるのである。適材の人材がいなければ、組織の方向転換は不可能なのだから。
たとえそこが陽影(ひかげ)であろうが、いるところにはいたのである。殺す以外の、武装錬金以外での、戦いの終わらせ方を模索していた者が。
彼らの存在は決して名前とともに語られることはなかった。が、その存在は間違いなく過去現在未来、錬金戦団に希望の蕾として存在していたのである。
また、これは後日譚にもなるのだが、全てのホムンクルスを月に送ってしまっては、再人間化の研究などできるわけがない。言葉は悪いが、サンプルとしてどうしても手元にもホムンクルスを残しておく必要がある。勿論サンプルというのは建前上の話であり、実際は剣持真希士を人間化したホムンクルスの始まりにしたいという思い一つによるもの。剣持真希士は、全ての錬金術の希望となるやもしれぬ。
これは決して語られることのなかった物語ではある。だが、だからこそここで触れる価値はあるだろう。
これは、剣持真希士を全てのホムンクルスの希望とする為に戦う戦士たちの物語。剣持真希士が人間を取り戻したとき、それが真のピリオドに向けた幸せな未来予想図。
戦士達がキャプテンの名の下に集い、今まさに未来を希望に変えようとしていた。
これが、ブラボーの選択した戦いだった。
この時には既に指示を一通り出し終えて、応援の声を送ることしかできない状態だとしても。今は信じて待つことが、戦いだと信じて。無理やり戦いたい気持ちを押さえつける。

今にも消えそうな儚い声が、強く耳に響く時がある。
諦めていた戦いへ続く道が、ひとつの奇跡が現実としてあなたの前に現れることがある。
「…ただいま、防人君」
その名でキャプテン・ブラボーを呼ぶ女性は限られている。
アンダーグラウンドサーチライト内部へ侵入していた彼女がいるということはつまり、そういうこと。
星が照らされるときが、星を照らすときが来たということ。
こうして朝が確実に歩み寄る。


風が吹いた。
雲が動く。
夜を止めないためにいよいよ月が顔を出す。

だがそれでも負けてはいけない。
こちらにだって仲間がいる。
月に負けない輝きをもつ、仲間たちがいるんだ。
こうして全ては複雑に絡みあい、一点への収縮をはじめる。
大丈夫、さっきより少し力が沸いてきている!

足音が聞こえた。
統率の取れていない軍隊のように、感情と欲望のリズムを鳴らして。
「来るぞッ!!!」
物語は最終局面へ、今。
月の引力に導かれて。月が堕ちる時間はいつだって、夜明け前。
「やあ」
たった二文字の台詞に、あらゆるものを見下す月の響きが込められる。
月は気がついたときには既に空に輝くもの。
だがその数。
100を超えて。

月が夜を駆ける剛太たちに追いついた。
コレから先の彼らの戦いはそう。信じて待つ戦い。
ムーンフェイスは剛太たちの核鉄を回収することに専念している。その間に動いていた、仲間たちがいる。これからの戦いはそう、そんな彼らを待つ戦いなんだ。
どうか、命を大事に。
だが、それでも。
目の前の月は、果てしなく高い。
「さあ、戦ろうか」
今宵は戦いの夜。戦いに「もしも」はない。
カーニバルはクライマックスに差し掛かり、全てはフィナーレへと導かれていく。
戦いにもしもはない。なぜなら、もしもを拒否する意志と行為が戦いなのだから。
いつか、全てが終わったとき、もしもを考えてしまわないように。
精一杯の戦いを。あなたに捧ぐ。



(「第四十二話 世界を守る戦士の出撃」へ続く)






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2008/11/09(Sun) | 小説・武装錬金B. | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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